この記事では、ノンフィクションライター窪田順生(くぼたまさき)氏によって書かれた次の書籍についてレビュー(書評)していきます。
窪田順生「潜入 旧統一教会」〜解散命令請求 取材NG最深部の全貌〜
2022年7月の安倍晋三元首相の事件以降、メディアでは連日のように「旧統一教会問題」が取り上げられましたが、そのほとんどの内容が、思想が偏った人達(弁護士・ジャーナリスト・学者含む)による一方的な批判意見ばかり。教団側や家庭連合の現役信者への取材に基づいた報道や見解はありません。
旧統一教会にも問題はあるものの、刑事事件もない家庭連合(旧統一教会)に対して、こうした公正な判断を阻害するような風潮は、民主主義国家としてはあまりにも危うい。そしてあろうことか与党政府(岸田政権)まで、全国弁連の話を鵜呑みにし、世論や野党の追求に押されたかたちで旧統一教会に対して解散命令を裁判所に請求するまでに至りました(2023年10月)。あまりにも残念でなりません。
この本では、政府がそんな解散命令請求をしようとする直前のタイミングにて、旧統一教会の施設や教団信者の多くに直接取材した内容がベースになっており、その客観性、正確性、取材規模、マスコミの問題点等、これまでの統一教会本、新興宗教本と比べても充実しており、内容も非常に興味深いものとなっています。
「潜入 旧統一教会」とは?著者の窪田順生氏について
窪田順生(くぼたまさき)氏の経歴について簡単に紹介しておきます。
窪田さんは、テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして活動中。著書はいくつもありますが、主に次の著書があります。
- 「愛国」という名の亡国論
- スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術
- 安倍政権の使命-動き出した反日マスコミ-
- 14階段ー検証新潟少女9年2ヶ月監禁事件ー
またネットメディアでも多数のコラムを連載中。旧統一教会の関連団体(政治団体)「国際勝共連合」の内部に潜入をしたドキュメンタリー「反日と愛国」も、記事とYoutube動画にて公開しています。
今回レビューする「潜入 旧統一教会」は2023年(令和5年)11月末に徳間書店より出版されました。
窪田順生氏「潜入 旧統一教会」の概要
本の目次
窪田順生氏「潜入 旧統一教会」「解散命令請求」 取材NG最深部の全貌』の本の目次は次の通りです(小項目については”一部抜粋”です)。
章立ては大きく分けて、前半4章が韓国の家庭連合(旧統一教会)本部や関連施設の取材内容、5章以降の後半は日本の信者や教団関係者への取材内容がベースとなり話が展開しています。
はじめに
第1章 「マザームーン」の暮らす宮殿
- 韓総裁からの信頼も厚い幹部職員が「聖地」を案内
- K-POPのコンサートも行う「清心平和ワールドセンター」
- 大理石を上ると、「マザームーン」の居住スペース
第2章 教団聖地の最深層
- ジャーナリストらが霊感商法と批判する「先祖解怨」の爆心地
- 清平は「堕落した人類」を生まれ変わらせる場所
- 35年前のバッシング時に小学5年生だった「祝福2世」の感想
- 平和活動の記念館「天寶苑」にメディア初潜入
第3章 韓鶴子が「オーナー」のホテル&リゾート
- 豪華施設と海外進出の資金源は「日本」?
- 従業員にとって韓氏は「教祖」ではなく「オーナー」にすぎない
第4章 合同結婚式で渡韓した「日本人妻」たち
- 日本人女性を待っていた「結婚したくて入信した韓国人男性」
- 日本人女性信者が明かす「マインドコントロール」の正体
- 「ねえ、お父さんってもしかしたら統一教会に騙されているんじゃない?」
第5章 政界と教団を結ぶキーマンが語る「洗脳」と「選挙」
- 富山で選挙3連勝の「政界の旧統一教会フィクサー」
- 多くの宗教団体が自民党を支えていたのに、なぜ「旧統一教会」ばかりが注目?
- 相手の都合などおかまいなしにリンチするTBS「報道特集」の金平キャスター
第6章 現役信者にとっての「山上問題」
- 「私たちの親には子どもを犠牲にしてもやらなくてはいけないことがあった」
- 「山上徹也被告の気持ちはわかる」という2世信者たち
- 「収入の3分の1」を献金する敬虔な信者は教団内でも珍しい
第7章 教団トップ・田中会長を直撃
- 韓鶴子総裁が幹部を「現場」に戻した「狙い」
- 物々しい雰囲気が漂う「教団本部」で会長にインタビュー
- 教団トップの素顔
- 「献金ルール」を徹底しているか教会に「査察」も入れる
- 「2世を会長にしたい、私は今でもそう思ってる」
- 田中会長が語る「岸田を呼んで教育しろ」発言の真意
- もっと早く名前が変わっていたら事件は起こらなかった
終章──勝共連合の正体
本の概要や見どころについて
こうした本の発売自体に意味がある
まず伝えたいことは、家庭連合(旧統一教会)の教団自体の発行本(主に光言社の本)は数多くあるものの、現実として書店にほとんど並んでいません。そんな状況の中で、現在書店等で出回っている「統一教会」のタイトルを冠した本のほどんどが偏った思想的背景をもとに書かれた本ばかりであり、実体とはかなり隔たりがあるということ。
なので、マスコミの批判報道とも相まって、旧統一教会という宗教団体の本当の姿はかなりの部分、誤って(悪く)人々に伝えられています。
そんな状況でもあるので、特に安倍元総理の事件以降、旧統一教会を擁護・客観視した本を書けば、それだけで大きな批判を免れない。著者にとってもリスクはあるというわけ。そんな中でも、こうしたきちんと取材して真実を伝えようとした本を出版した窪田順生さん、そして出版社の「徳間書店」には本当に敬意を表するところです。
本のボリュームはあるが読みやすい
この本は320ページもあるため、それなりにボリュームがあります。本が苦手な人だと読みにくいと思われがちだが、そんなことはないですね。
全体的に平易な文章で書かれています。
また取材した対象の方との会話内容も多く、窪田さんの主観や感想もはさみつつも、文章の強弱やストーリー的な展開もはっきりしていて非常に読みやすいです。基本的には最初の章から順番に読むのが良いですが、途中から気になる章だけ読んでも問題ない構成となっています。
前半は韓国取材、後半は日本取材
本の1章から4章までの前半は、韓国の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の本部や、加平郡清平(チョンピョン)にある数々の施設、また関連施設の取材と考察がメイン。テレビで宮殿のような建物を見た方もいるでしょうが、その内部に取材したということです。また韓国に行っている日本人信者の取材内容もあります。
5章以降の後半は、主に日本の信者への取材。沖縄のある教会に訪れた話とか、信者の家庭にお邪魔した話とか、信者で事業をされている方のお話等。また旧統一教会の田中富広会長への取材とその考察もありますが、ここは窪田さんも想定外な印象だったようです。
韓国在住の信者と、日本の信者の違いも興味深いです。
韓国の旧統一教会本部に初めて潜入
本のタイトルにもあるあるように、韓国にある旧統一教会本部に、ジャーナリストとして初めて潜入したということです。窪田順生さんは自分ではノンフィクションライターと名乗っているためジャーナリストではありません。ここはマスコミ、報道陣の中では、信者でない一般人が初めて取材で入ったというところがミソです。
韓国本部が良く許可したなと思いますが、それだけの信用関係を窪田さんが築いてきたからというのは言うまでもないですね。つまりは、それまでどのジャーナリストも正式に取材申込すらしていないか、あるいは取材を申し込んでも断られていたわけです(勝手に侵入して追い出されたジャーナリストは何人もいたが)。
旧統一教会信者の生の声が分かる
この本の大きな目的はまさにこれでしょう。マスコミで流れている統一教会報道における信者の話は、そのほとんどが元信者と言われる人たち。
わざわざマスコミに出て話す元信者というのは何らかの恨みを教団に抱いているケースが多く、話を大袈裟に盛ったり、嘘を交えるなんてことも普通に多い。見てたら分かります(中には信者でない人が信者と偽って他ケースもあった)。
しかし、この本では窪田さんが50人以上の信者に話を聞いたというだけあって、旧統一教会現役信者の生の声が分かります。マスコミの報道とのギャップにびっくりする方も多いのでは?と思う。
マインドコントロールか?→いや普通だった
本を全体的に読んで感じたのが、窪田さんはあくまで一般的な世間の目線から書いているということ(本の読者ターゲットがそういう人達ということ)。
マスコミのプロパガンダによってイメージが作られてしまったとは言え、「旧統一教会の信者はマインドコントロールされている!」という考えを信じている人は実際のところ多いでしょう。
マインドコントロールについて語れば長くなるのでここでは言わないですが、窪田さんは頻繁に
「○○に入るとマインドコントロールされるのか?」
「この人達はマインドコントロールされてるのか?」
といった問いかけを入れながら、結論として「そんなことは無かった、普通だった」と結論づけています。そんな箇所が多いんですね。
信者の立場からすれば、マインドコントロールなんてばかげているとしか言えないが、世間の多くが大真面目にマインドコントロールや洗脳があると思っている以上、そこに対して疑問を投げて、実際はこうだった。という話の展開はとても意味があると言える。
窪田さんはこのあたりの話の展開が非常に上手い。統一教会のことが良く分からない読者がこの本を読んだあと、信者の真の姿を知ってどう思うのか?が非常に興味深いです。
マスコミの問題点、TBSが酷い話
これも本を全体的に読んで感じたのが、窪田さんもその業界の中にいるという「マスコミ」の闇のこと。とにかくTBSは酷い。報道特集のあの(前任の)キャスターなんて何様のつもりか?と誰でも思うでしょう。人権も何もあったものではない。
マスコミが旧統一教会報道で何をやってきたのか、何が問題なのか?についてもしっかり書かれています。窪田さんはあまり直接的な批判はしないですが、事実をそのまま書くことによって、マスコミの酷さが顕になってるのが、皮肉まじりでもあり、これもプロライターとして上手いなと思うところです。
🔽 潜入 旧統一教会 解散命令請求 取材NG最深部の全貌
窪田順生さんが出演している動画
窪田順生さんが「潜入 旧統一教会」を発売してから、本の宣伝も兼ねていくつかのYoutube動画やイベントにも出演しています。どんな方なのか?本の概要やポイントを本人の語り口から聞きたいという方は、ぜひこちらもご覧下さい。
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「潜入 旧統一教会」は誰に読んでほしい本なのか?
窪田順生氏による、「潜入 旧統一教会「解散命令請求」 取材NG最深部の全貌」についてレビューしてきました。
この本は誰にでも読みやすいですし、特に信者向けとか、宗教に意識のある人向けとか、そういう類の本ではありません。信者が読んでも楽しめますし考えさせられますし、一般の宗教に関心の無い方が読んでも興味深い内容が沢山あります。
ただ単に本の内容を楽しむだけでなく、刑事事件もない世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が信教の自由を脅かされ、様々な不利益を被っている現状をハッキリと理解してほしいというのは、個人的にも思います。
旧統一教会側にも問題はありますが、安倍元総理の事件以降のマスコミの追求報道は異常すぎます。人権が!被害者が!と言えば何でも通用するわけではありません。
窪田順生さんが「はじめに」の中でも言われていますが、知らないことや理解できないことであっても、認めて、お互いに共存できる道を探ることが人間社会であり、それが本当の意味での「多様性」ではないでしょうか。わからないことだからとレッテルを貼って排除するのが、今旧統一教会を一方的に批判している人達のやってること。それはいずれは全体主義の道を開くことになる恐ろしいものです。
ぜひ多くの方に真実を知っていただきたいものです。
🔽 窪田順生「潜入 旧統一教会」〜解散命令請求 取材NG最深部の全貌〜
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