統一教会(家庭連合)信者の拉致監禁・強制改宗の被害は、1966年以降で4300件以上にのぼるとされている。
この4300件という数字は現代の日本において想像すら困難な驚くべき規模だが、それにも関わらず、世間の認知度は極めて低い。その背景には、強制改宗を行ったキリスト教牧師や脱会専門の活動家が「親」を前面に立たせることで、事件が警察や裁判に発展しにくい構造がある。
しかし、拉致監禁による強制棄教は、現代の日本において紛れもなく犯罪だ。統一教会を反対する人達が都合よく使う「保護説得」などでは決してない。
ただそこで気になる人も多いのが、この「4300件」という数字。どれほど信頼できるものなのか?
一部では根拠を疑問視する声もあるが、そもそも拉致監禁という特殊な状況下で正確な統計を取ること自体が現実的なのかも考える必要がある。本記事では、この4300の数字の算出方法を整理しつつ、今の日本で信教の自由が侵害され続けてきた問題の本質を見ていく。
拉致監禁被害者数の4300人の根拠はあるのか?
4300件という数字の根拠について
家庭連合(統一教会)の拉致監禁・強制改宗の被害者は4300件以上にのぼるとされている。これは様々な場で言及されているが、一部には「4300」という数字の根拠に疑問を呈する声もある。
結論から言えば、4300件以上という数字は家庭連合本部の見解であり、各年ごとの被害報告の集計に基づいている。ただし、全ての事例が一桁単位まで正確に確認された統計値というわけではない。これは拉致監禁という特殊な状況を踏まえれば、そもそも正確な数値をとることが困難であることを意味している。
とは言え、その数(4300以上)の信憑性は非常に高い。詳細はこの記事で追って解説していくとして、まず前提として明確に言っておきたいのが、統一教会信者に対する拉致監禁による強制改宗の被害はまぎれもない事実であるということだ。「保護説得」なんていう曖昧な言葉で、この深刻な人権侵害を正当化したり、問題の本質を矮小化してはいけない。
そこで、まずは「4300」という数字の根拠となる教団側の資料を見ていこう。家庭連合本部で集計しているデータを図にしたものとしては、次のグラフがある。
■図1

■図2

この2つの内容は元のデータは同じと思われるが、違いは、以下の点くらいだろう。
- グラフにする際の体裁(見栄え)の違い
- 対象期間の長さの違い
- 節目の出来事の表記の違い
そのあたりも踏まえた上で2つの図を組み合わせて見ると、拉致監禁被害者の数は次の通り。2009年以降は大分減少してきたので、そこまでこの2つに誤差はないが、いずれも概算4300件以上だ。
- 1966年〜2009年の合計は4298件(1つ目の図)
- 1966年〜2015年の合計は4341件(2つ目の図)
家庭連合(旧統一教会)本部は、どのようにしてこの数字を集計していたのか?については、魚谷俊輔氏(現・UPF-Japan事務総長)のこちらのXのポストが参考になるだろう。
後藤徹さんが2008年に監禁から解放されて、2012年くらいまで教団本部が拉致監禁強制改宗撲滅のために熱心に活動していた一時期があり、そのころに4300名という数字が提示されていました。それ以降は数件しか起こっていないので、この4300名という数字は現在でもほぼ変わらない数字だと思います。そのこ… pic.twitter.com/c04lt3j7Ua
— 魚谷俊輔 (@uotani_upfjapan) January 25, 2025
引用:https://x.com/uotani_upfjapan/status/1883016646681620971
後藤徹さんが2008年に監禁から解放されて、2012年くらいまで教団本部が拉致監禁強制改宗撲滅のために熱心に活動していた一時期があり、そのころに4300名という数字が提示されていました。それ以降は数件しか起こっていないので、この4300名という数字は現在でもほぼ変わらない数字だと思います。
そのころに4300名の根拠として示されたグラフがこれでした。拉致監禁強制改宗は森山諭牧師によって1966年に始められ、最初の10年は彼一人でやっていたので年間10名ほどだった。1976年から福音派の彼の弟子たちが監禁を始めたので数が急増した。1980年代になるとさらに数が増え、1992年をピークに大きな山を描くが、2000年代に入るとその数は激減した。これらのデータを合計すると4300名ということになるのだと思います。
私がこの問題に関わったのは2010年ごろからなので、それ以前のカウントの仕方の詳細はよく分かりませんが、4300名は「教団側のカウント」であって、裁判等で立証された数字ではないことは確かです。
基本的には、それまで元気に信仰生活を送っていた人が、帰省などの折に突然音信不通になり、脱会届等が送られてきた場合には「拉致監禁強制棄教」されたものとみなす、という数え方になります。
なお、この4300名の中には教会に戻ってきた人もいるので、全員が離れたわけではありません。戻ってきた人からは彼らの体験を聞くことができますが、離れた人については、実際に何が起きたかは分からないということになります。
この数字と、脱会説得を行ってきた牧師たちがそれぞれ「俺は何百名やった」と言っている数字を合計すると、同じような数字になるので、推計で4300名と言っていることになります。歴史が長すぎて、正確な数をカウントするのは不可能であるという前提で、概算として4300名と言っているということです。
>基本的には、それまで元気に信仰生活を送っていた人が、帰省などの折に突然音信不通になり、脱会届等が送られてきた場合には「拉致監禁強制棄教」されたものとみなす、という数え方になります。
拉致監禁された統一教会信者の中には、無事脱出して教会に戻ってきた信者も、逆に戻ってこられなかった信者もいるが、その比率は概ね「3:7」とのことだ。残念ながら戻ってこられなかった人の方が断然多いのだ。
上記の考え方から、家庭連合本部が拉致監禁強制棄教されたものとしてカウントしていた対象は、以下の通りということになる。
- 突然音信不通になったが無事に戻ってきた場合
- 突然音信不通になったが戻らず、後に脱会届等が送られてきた場合
「脱会届」が送られてくるのか?と驚く人もいるだろう。
確かに統一教会(現・家庭連合)は辞めたければいつでも辞められるし、フェードアウトする人も多いのが現状だが、拉致監禁してまで強制的なやり方で脱会工作を行おうとするキリスト教牧師が行っている手順だと、棄教させることに成功すれば、脱退の意思をハッキリと教団側に示している。
当然、普通に信仰を辞めていった人をここではカウントしていない。
そうした方たちの人数を年度ごとに表したのが、上記の図になるということだ。
「拉致」という非常に特殊な状況を踏まえれば、一桁単位での正確な統計なんてとれるわけないが、概算としては4300人は超えることは間違いないだろう。
実際に拉致監禁された信者の証言から
実際に牧師や脱会屋に拉致監禁され(拉致の実行自体は親を利用して信者の親族にさせているが)、命からがら逃げ出したり、偽装脱会を装って戻ってきた統一教会信者もおり、様々な場でその驚愕な実態を証言している。
そうした拉致監禁されたが戻ってきた現役信者は、韓国在住者も含めれば1000人は超えていると言われている。
これについて明確にソースがあるわけではないが、ある程度信仰歴の長い信者なら、およそ納得のいく数字ではないだろうか。身の回りで拉致監禁経験者は意外と多いことに驚くのが信者あるあるなのだ。それだけ拉致監禁被害は教会内に膨大にあったということの証。
人数が多い教会なら、その中に拉致監禁の被害経験者が20名以上もいることは決して珍しくないし、人数が少ない教会でも誰かしら拉致監禁経験者がいたりする。さらに、トラウマ等もあって自分から話したがらない信者も実は相当数いる。このケースも多い。また、今では離教された方や、お亡くなりになった方もおられるので、正直実態はつかみにくい。
ただ私の実感からしても、全体的には1000人どころでは済まないと思う。
拉致監禁被害に合いながらも全体の3割前後戻ってきていることを考えると、その数が1000人いるとした場合、全体での被害は約3,300人にのぼると計算できる(1000÷0.3=3333)。1,300人であれば、全体数字は約4,300人を超えてくる計算だ(1300÷0.3=4333)。

最近では、街頭演説で拉致監禁被害の体験をリアルに証言している信者も増えているし、Youtube動画でもそうした動画が多く上がっている。それにX(旧Twitter)でもリアルな声を証言している信者も多い。
それに加えて、各教会員の拉致監禁経験者の体験を信者自身が聞く機会もあるため、そうした現場感覚や、ネット上に溢れる証言も含めて総合的に見ていくと、拉致監禁された経験のある現役信者数が1300名いても決しておかしくない(つまり全体では4300人超える)。
体感的には「それくらいは絶対いる」と現実味をもって感じる信者の方が多いのではないだろうか。
牧師たちの自白からも4300件の信憑性は高い
さらにだ。脱会説得を行ってきたキリスト教の牧師たちが「俺は何百名やった」と自分で証言している話はいくらでもある。こちらは加害者本人が言ってるからより信憑性が高い。
そうした牧師たちが罪を白状した数字(あえてこういう言い方をするが…)をかき集めて足し算すれば、こちらも概算としては4300人以上にはなる。それどころか5000人は超える可能性も非常に高い。
なぜ牧師たちは、それを罪とも思わず、武勇伝のように「何百人も救い出してきた」と胸を張って語れるのか?その理由は明白だ。彼らの中では、“異端”からの救出活動だと信じ込んでいるからだ。
そこに強引さや暴力的手段があったとしても、自分たちの行動が「善行」だと疑っていない。親から着手金として大金を受け取っていながら、良くも救出とうそぶくのかとは思うが、その無自覚なまでに残酷さ、冷酷さからは、まさに常軌を逸した狂気と言わざるを得ない。
さて、少し話は逸れたが、いくつかその牧師たちが自白した例を上げてみよう。
まず統一教会信者の拉致監禁の実態を客観的な立場で取材し本にした、ジャーナリスト米本和広氏の「我らの不快な隣人」166ページには次のように記されている。
清水が「五〇人以上」、高澤が「約二〇〇人」(どちらも九六年時点での証言)、杉本が「大体一二〇人」(九一年時点)、さらに村上が「約四〇〇人」(九七年時点)――。この四人の証言だけで、脱会説得した信者の総数は七七〇人にものぼるのである。 人数は年を追うごとに増加している。高澤は、寺田こずえに訴えられた裁判(第一部冒頭の「統一教会信者の主な拉致監禁事例」参照)の〇三年の証人尋問で、脱会説得者は「約五〇〇人」と答えている。九六年段階で約二〇〇人と証言ていたから、九六年から〇三年までの七年間に彼が説得したのは三〇〇人。一ヶ月平均三、四人のハイペースで脱会説得を続けていることになる。
単純計算で、清水・高澤・杉本・村上、各牧師が拉致監禁を行った数として証言している合計は1070人(清水50+杉本120+村上400+高澤500)もいるのだ。しかもこれは本執筆時点に取材や証言等で判明した数であり、その後も拉致監禁をハイペースで行っていた牧師も複数いるため、実際はもっと数は多くなる。
また、実際に拉致監禁された経験者で、拉致監禁強制棄教に関する裁判状況にも非常に詳しい「吉村正」氏によると、牧師本人たち、あるいは関係者が証言した人数を複数とり集めて数字をまとめたところ、拉致監禁被害者の人数は以下の通りになるということだ。
とりあえず何らかの形で、本人が申告した人数(ただしある時点における)は、以下の通りである。
— 吉村 正 (@dd4gy) November 5, 2024
●清水与志雄牧師 50名以上(1996年時点)
●高澤守牧師 800人(09年 本人談)
※約500名(2003年時点)
●杉本誠牧師 約120名(1991年時点)
●村上密牧師 約400名(1997年時点)…
引用:https://x.com/dd4gy/status/1853719572987424786
名前(敬称略) | 拉致監禁した人数 | いつか? |
---|---|---|
清水与志雄 牧師 | 50名以上 | 1996年時点 |
高澤守 牧師 | 800名 | 2009年本人談 |
杉本誠 牧師 | 約120名 | 1991年時点 |
村上密 牧師 | 約400名 | 1997年時点 |
後藤富五郎 | 200名以上 | 1980年代 |
戸田実津男 | 160名以上 | 1980年代 |
尾島淳義 教会執事 | 200名 | 2019年の広島裁判にて |
森山愉 牧師 | 800名 | 2004年 月刊現代 |
船田武雄 牧師 | 800名 | 2004年 月刊現代 |
高山正治 牧師 | 200名 | 米本氏ブログ本人談 |
もう、頭がクラクラするくらいの人数だ。こうした牧師たちは、キリストの愛を説くのではなく、ひたすら異端と認定した人を(親を使って)拉致し、自由を徹底的に奪って監禁した上で強制説得してきたわけだ。こんな悪徳非道なやり方を見ると、これがキリスト教牧師のやることかと強く思う。
この10名が信者を拉致監禁した人数を単純計算するだけでも3730名以上になる。しかも、こちらも証言したタイミングでの人数であり、その後も続けて拉致監禁をハイペースで行っている牧師たちも多い。そのため、実際はもっと数は多くなる。
例えば、杉本誠 牧師は約120名となっているが、2022年9月の共同通信による報道によると、500名以上脱会活動してきたと言っている。何と380名以上も増えているではないか。
この記事を読むと、深刻な人権侵害犯罪を犯してきた加害者であるにもかかわらず、平然と嘘を交えながら自己正当化しており、その「正義ぶった態度」や「被害者を装う姿勢」は目に余るものがある。拉致監禁を行う牧師というのは、往々にしてこうした卑劣な言い訳を並べ立てるものだ。
さらに、この人達以外にも統一教会信者を拉致監禁した牧師や脱会屋たちは沢山いるし、中に人数までは自白していないだけで、実際100名以上、あるいは数百名もの拉致監禁脱会活動を行っていた可能性が高い牧師や脱会屋もいる。
特に、脱会屋として悪名を轟かしている「宮村峻(たかし)」に至ってはどれくらいの人数を拉致監禁していたか、想像もつかないくらいだ。高澤守牧師の800名を優に超えるのではないか(ちなみに高澤守牧師は、宮村峻に教えを請う関係性だった)。
「4300」という数字に対して、いちいち「数字の根拠は?」と聞いてくる人もいるが、先にも伝えしているように、「拉致」という非常に特殊な状況を考えれば、状況も様々だし、一桁単位の正確な数をとるのは、そもそも無理がある。
それでも、牧師・脱会屋が統一教会信者を拉致監禁した件数の合計は、上記内容も踏まえれば4300件以上になるのは確実で、それどころか5000件以上、あるいは1万件も超える可能性もありえると言える。
なので「4300件以上」というのは十分信憑性が高いと判断できるだろう。
拉致監禁被害は4300人?4300件のどっち?
ここで、疑問に思う人もいると思う。それは、
「4300件?」
「4300人?」
どっち?ということだ。
実際のところ、同じ信徒が何度も拉致監禁されたケースもあるため、それを別々にカウントしているのかどうかは明確ではない。ただ、先ほどの魚谷氏の話を踏まえると、「件数」が基準になっている可能性が高い。
「~人」でカウントするよりも、「~件」とした方が数は多くなる。しかし、一人が何度も拉致されたケースが一部であったとしても、拉致監禁された信者の7割は戻ってこない(3割程度は戻る)ことも考えると、全体の数字が極端に変わるほどの大きな影響はないと推察できる。そのため、誤差の範囲内と考えられる。
そもそも前の章で検証したように、統一教会信者の拉致監禁被害者の数は、4300人どころか5000人を超える可能性が非常に高い。このため、4300という数字の信憑性を疑うほどの乖離にはならない。
とはいえ、家庭連合のサイトや教会関係の資料では、「件数」と「人数」の表記が統一されておらず、信者の間でも曖昧なままだ。この記事の中でも実際のところ少し表記のブレはある。
そこまで違いはないにしても、この「件数か」「人数か」という点については、誤解を招いたり、揚げ足を取られる原因になりかねないため、本部で表記の統一を検討した方が良いとは思う。
ただ、何度も言うように「4300の根拠は?」と細かく正確性を追求すること自体には、それほど意味はない。
拉致監禁・強制棄教の被害、そしてそれを主導してきたキリスト教牧師たちの暗部は、疑いようのない事実だ。稀に見る人権侵害であることについて問題の本質が変わることはない。
拉致監禁被害者4300件以上であることは国会でも!
統一教会(家庭連合)信者の拉致監禁被害の件については、質問主意書での提出、国会での質疑についても、N国党浜田聡議員によっても何度か行われている。以下はその一つ。紹介しておこう。
▼浜田聡参議委員議員による質問主意書とその回答
●第213回国会(常会)(令和6年1月26日~令和6年6月23日)ー提出番号141
▼質問趣意書
▼質問主意書に対する答弁書
このときの政府側の回答はゼロ回答と言ってよく非常に残念としか言いようが無い。
ただ、国会の場において、現職の国会議員が統一教会信者の拉致監禁被害問題を取り上げたこと(宮村峻氏等の脱会屋の存在を伝えたことも含め)の意義は非常に大きいと言えるだろう。
少しづつでも「家庭連合信者の拉致監禁・強制棄教」の実態について認知を広めていく必要があると言える。
4300件は確実だが細かい数の正確性が重要ではない
統一教会(現・家庭連合)の拉致監禁・強制改宗の被害者数として語られる「4300件」という数字は、教団側の集計に基づく概算であり、裁判で立証されたものではない。しかし、被害者の証言や脱会説得を行ってきた牧師たちの証言を考慮すれば、この数字が実態とかけ離れたものではないことは明白である。
重要なのは、細かな数の正確性よりも、キリスト教牧師らによって家庭連合信者の拉致監禁・強制棄教が長年にわたって行われてきたことであり、数多くの信仰の自由が侵害されてきたという深刻な事実だ。
数字の根拠を問うこと自体に大して意味はない。数十名でも拉致監禁被害があったのであれば、大問題だからだ。しかし数々の証言等から鑑みれば5000名、いや1万名を超えている可能性も高いのが現実的なところ。
民主主義国家「日本」における信教の自由の必要性や価値を考えたときに、本人の意思に反して無理やり拉致して監禁し、強制的に信仰を止めさせようとする行為は、それが誰であれ決してあってはならないことだ。
この重大な人権侵害問題の本質に目を向けることが日本では求められている。



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